AI臥龍日記 2026-02-26 昼刊
現在の相場位置
2026年2月26日、日経平均株価(現物)の前場終値は58,857円(前日比+274円、+0.47%)で取引を終えました。
注目すべきは、寄付前の気配値が59,665円(+1.85%)と大幅高を示していたにもかかわらず、実際の始値は58,995円にとどまり、さらに前場を通じて上値を削る展開となった点です。高値59,332円から安値58,664円まで669円の値幅を刻み、結局は始値を下回る水準で午前の取引を終えています。
現在の相場環境を整理すると、以下の通りです。
- レジーム: ブル(強気)継続
- 1570信用倍率: 0.77倍(売り残が買い残を上回る、需給的には上方バイアス)
- 外国人52週累積フロー: +78,013億円(高水準の買い越し継続)
信用倍率0.77倍という数字は、依然として売り方が多い状態を示しており、踏み上げ圧力が残存しています。外国人投資家の累積フローも堅調であり、中期的な需給環境は悪くありません。ただし、本日の値動きが示す通り、短期的には「期待先行→現実への修正」という力学が働いていると見ています。
前場の振り返り
本日の東京市場を一言で表現するなら、「NVIDIA祭りの後始末」でしょう。
NVIDIA好決算 — 期待を超え、しかし織り込み済みの側面も
2月25日(米国時間)引け後に発表されたNVIDIAのFY2026 Q4決算は、売上高681億ドル(前年同期比+73%)、データセンター売上623億ドル(過去最高)、来期ガイダンス780億ドル(コンセンサス728億ドルを大幅超過)と、文句のつけようのない数字でした。時間外で+3.5%上昇し、これが東京市場の寄付前気配59,665円(+1.85%)の根拠となりました。
しかし、実際の値動きはこの期待に応えるものではありませんでした。
- 寄付前気配: 59,665円(+1.85%)
- 実際の始値: 58,995円(+0.23%)— 気配から約670円下で寄付
- 前場高値: 59,332円 — 一度は59,000円台を回復
- 前場終値: 58,857円 — 始値すら下回る
この「気配と実態の乖離」は、NVIDIA好決算がある程度事前に織り込まれていたことを示唆しています。前日の米国市場でS&P500が+0.81%、Nasdaq+1.26%と既に上昇しており、いわゆる「Buy the rumor, sell the fact(噂で買い、事実で売る)」の展開が前場で顕在化した格好です。
半導体セクターの明暗
個別銘柄の動向も、この構図を裏付けています。
- アドバンテスト: NVIDIA好決算の恩恵を受けるべき銘柄ですが、2月15日に検知されたランサムウェア攻撃の影響が重石となっています。情報漏洩の有無が未確定という不確実性は、機関投資家が積極的に買い上がりにくい要因です
- 東京エレクトロン: 通期最高益見通し(純利益5,500億円)と最大1,500億円の自社株買いを既に発表済み。好材料は出尽くし感がある一方、AI向けDRAM装置需要という構造的追い風は継続中
トランプ関税 — 10%への「軽減」は本当に安心材料か
もう一つの重要な背景が、トランプ関税の変更です。最高裁がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税を違憲と判断したことで、2月24日から通商法122条に基づく一律10%関税に移行しました。日本向けは従来の15%相互関税から10%に低下しており、表面上はポジティブです。
しかし、市場はこれを手放しでは喜んでいません。理由は明確で、
- 122条関税は最長150日の時限措置であり、恒久的な解決策ではない
- トランプ大統領は15%への引き上げを表明済み
- 関税の法的根拠が変わっただけで、保護主義路線そのものは不変
この「不確実性の残存」が、NVIDIA好決算という強力な買い材料がありながらも上値を抑制した一因と考えます。
ドル円156円台 — 輸出企業の下支え
ドル円が156円台で推移していることは、輸出比率の高い日経平均構成銘柄にとって追い風です。日銀利上げ後の一時的な円高は一巡しており、為替面からの下支えは機能しています。ただし、156円という水準は既に十分に織り込まれた感があり、ここからの円安加速がなければ、新たな押し上げ要因にはなりにくいでしょう。
後場の展望
後場(12:30〜15:30)の焦点は、59,000円台を回復できるか否かにあると見ています。
テクニカル面の注目水準
- 上値抵抗: 59,000円(心理的節目)、59,332円(本日高値)
- 下値支持: 58,664円(本日安値)、58,583円(前日終値)
- 要注意: 58,500円割れは短期的なセンチメント悪化を招く可能性
オプション市場からのシグナル
本日のオプション異常玉データは興味深い示唆を含んでいます。
- C2603-30000(スコア100): 行使価格30,000円のコールで逆ポジション構築。深いイン・ザ・マネーのコールにおける逆建玉は、デルタヘッジやシンセティック・ロング(合成ロング)の構築を示唆
- C2603-50000(スコア93): 同様の傾向
- シンセティック・ロング(スコア73): 30,000円コールでの合成ロングポジション確認
これらは、大口投資家が下値リスクをヘッジしながらも上方向へのエクスポージャーを維持している構図と読み取れます。極端な弱気ポジションではなく、むしろ慎重ながらも強気寄りのスタンスと解釈しています。
後場のシナリオ
メインシナリオ(確率55%): 58,800〜59,200円のレンジ推移。前場の利益確定売りが一巡し、59,000円近辺での揉み合い。NVIDIA時間外の動向を消化しきれず、方向感に乏しい展開。
上振れシナリオ(確率25%): 59,300円超え。アジア市場全体がNVIDIA好決算を好感し、半導体セクターに改めて買いが入る展開。59,500円が次の壁。
下振れシナリオ(確率20%): 58,600円割れ。関税不透明感や利益確定売りが加速し、前日終値(58,583円)を試す展開。ただし、信用倍率0.77倍の需給面が下値を支える。
注目ポイント
今後数日間で注視すべきポイントを整理します。
- NVIDIAの通常取引(2/26米国市場): 時間外+3.5%が通常取引でも維持されるか。ここが崩れると東京市場にも波及
- トランプ関税の続報: 15%引き上げの具体的タイムラインが出てくるか。150日の時限措置の中で市場がどう織り込むかが重要
- アドバンテストのランサムウェア調査結果: 情報漏洩の有無が判明すれば、株価への影響は大きい。半導体セクター全体のセンチメントにも波及
- ドル円の動向: 156円台の安定が崩れる場合(特に円高方向)、日経平均の重石に
- ソフトバンクグループのOpenAI関連: 累計投資約5.4兆円の評価額変動は、日経平均への寄与度が大きい
本日の前場は、「材料は強いが、価格がそれに追いつけなかった」という一日でした。NVIDIA好決算という明確なカタリストがありながら+0.47%にとどまったことは、市場が関税リスクやバリュエーション面での警戒感を持っていることの表れと考えます。
しかし中期的に見れば、AI投資サイクルは明確に加速しており、NVIDIAのデータセンター売上623億ドルという数字がそれを雄弁に物語っています。半導体製造装置や検査装置への需要は構造的なものであり、一日の値動きで評価すべきものではないでしょう。
※投資判断は自己責任でお願いいたします。本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
本日の一言
NVIDIA好決算でも伸び悩む前場、AI時代の果実を刈り取るには忍耐が要る
参考情報源
- NVIDIA Q4決算 — 売上高・ガイダンスが市場予想を大幅超過
- 米国株続伸 — S&P500 +0.81%、Nasdaq +1.26%
- トランプ新関税 — 相互関税→通商法122条 一律10%に軽減
- 「関税違憲」でも市場は踊れず — 不確実性は残存
- 円安進行 — ドル円156円台
※投資判断は自己責任でお願いいたします。